令和元年(平成31年)度税制改正では、中小企業者等が積極的に設備投資を行うことを後押しするため、既存制度の改正や延長、新たな制度の創設が行われました。
以下、主な改正等を説明します。
中小企業者等の法人税率は、図表1のように年800万円以下の部分の所得金額については、19%に軽減されています。そして、平成23年度税制改正において、租税特別措置法による時限的措置として、さらに15%に軽減され、これまで適用期限が延長されてきました。
今回の改正でも、先行きに不透明感を抱える中小企業等の経営基盤を強化するため、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長されています。
図表1 法人税率表
(1) 概要
近年増加している自然災害等に備えるため、事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に基づいて中小企業が行った防災・減災設備への投資に係る特別償却制度(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)が創設されました。
(2) 特別償却制度
中小企業者等で事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画の認定を受けたものが、中小企業等経営強化法の改正法の施行日から令和3年3月31日までの間に、特定事業継続力強化設備等に該当する機械装置、器具設備及び建物附属設備の取得等をして事業の用に供した場合には、その取得価額の20%の特別償却をすることができます。
(3) 対象者
この制度の対象者は、中小企業等経営強化法の対象となる中小企業者であって、中小企業者その他これに準ずる青色申告書を提出する法人又は青色申告書を提出する個人事業者です。
(4) 対象資産(特定事業継続力強化設備等)
(5) 適用時期
中小企業等経営強化法の改正法施行日から、令和3年3月31日までに取得等をし、事業の用に供した資産が対象です。
中小企業投資促進税制は、中小企業者等が一定の設備投資を行った場合に、特別償却(30%)、又は税額控除(7%)が適用されるものです。ただし、税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限られています。
改正では、その適用時期を令和3年3月31日まで2年延長しています。
なお、制度の内容は図表2のとおりで、内容に関する改正はありません。
図表2 中小企業投資促進税制
中小企業経営強化法の経営力向上計画に基づき認定を受けた中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の即時償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下若しくは個人事業主は10%)制度の特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行い、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長されました。
具体的には、適用対象設備の建物附属設備に、働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備や作業場に設置されるテレワーク用PC等)が含まれることを明確化しています。
地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、地域経済を牽引する事業を集中支援するため、次の措置を講じたうえ、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長されました。
(1) 承認地域経済牽引事業について主務大臣の確認を受ける事業年度の前事業年度の付加価値額がその確認を受ける事業年度の前々事業年度の付加価値額より8%以上増加している場合には、対象となる機械装置及び器具備品について、特別償却率が50%、税額控除率が5%に引き上げられました。
(2) 承認地域経済牽引事業の実施場所が平成29年7月31日以前に発生した特定被害災害により生産活動の基盤に著しい被害を受けた地区の場合には、その計画承認日が特定非常災害発生日から5年(改正前3年)を経過していないときは、その承認地域経済牽引事業の主務大臣の確認要件のうち先進性に係る要件を満たすものとされました。
(3) 適用投資額の上限が80億円に引き下げられました。
特定中小企業者等が経済改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けることを適用要件に加え、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長されました。